以下の文章は,東京薬科大学の卒業生へ送られる会報誌「とうやく」の381号(2008年1月)に掲載された文章を一部改変したものです。
文部科学省「社会人学び直しニーズ対応教育推進プログラム」採択事業
「出産・育児のため休職・退職した生命科学系研究者向けバイオキャリア講座の開発」
東京薬科大学 生命科学部
環境ゲノム学科
環境応答学研究室
都筑幹夫
はじめに
平成19年度の文部科学省「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム(以下“社会人学び直しプログラム”と略します)」として、本学の申請課題「出産・育児のため休職・退職した生命科学系研究者向けバイオキャリア講座の開発」が採択されました。この「社会人学び直しプログラム」は、“何度でも再チャレンジができる社会の構築”を目指して制定された「再チャレンジ支援総合プラン」に基づき、文部科学省が、各大学などにある教育研究資源を活用して、社会人の学び直しニーズに対応した教育プログラムを展開する新たな試みです。
本採択事業の内容
このたび採択された事業は、勤務経験を有し、出産・育児により休職・退職した生命科学系研究者(修士または博士)が、出産・育児を経た後に円滑に次のキャリアをスタートできるための環境づくりを行おうとするものです。中途採用のニーズが高いバイオベンチャー企業を学び直し後の再チャレンジ先として設定した短期カリキュラムの開発を目指しています。
国としては内閣官の再チャレンジ支援総合プランで「出産・育児を行った女性の支援」の重要性が上げられていますし、生命科学部の卒業生の中にもこの時期を迎えている方々が多くなってきました。もちろん薬学部の卒業生の方々は遥かに多くの年代の方々が該当することになります。
カリキュラムの内容
本事業の概要は、図に示してあります。「バイオキャリア講座開発室」を設けてカリキュラムの立案と実施を担当し、学内全体を含めた少し広い視点から本事業の動きを「運営委員会」で管理する体制です。さらに学内外の方々からの評価をいただくため「評価委員会」の設置も必要なところです。本事業の実施には、学内関係者だけでは到底できないことが多々ありますので、学外からの応援も仰いでいます。
こうした体制をもとにして、本学が持つ体系的な大学院教育システムや研究設備等を活かし、カリキュラムは、座学、ラボ実習、インターンシップの3つで構成することになります。座学には、大学院の講義(1講座)とビジネス・実務及びキャリアパスの関連講座(約10時間程度)を予定し、さらに、50~55時間程度のラボ実習と70~75時間程度のインターンシップを予定しています。インターンシップやビジネス・実務及びキャリアパスの関連講座、そして広報活動などは、卒業生が多く活躍している株式会社リバネスの協力で進める予定です。詳細はこれから決めていくことになりますが、本講座の修了は、基本的にはこのカリキュラムを半年間で学ぶ形となります。しかし、インターンシップをラボ実習で置き換えたり、受講生の都合に合わせて期間を短縮あるいは延長したりするなど、フレキシブルなカリキュラムにする必要もあるかと思われます。修士の学位を持つ受講生が、博士号の取得を目指すことになる場合があればたいへん望ましいことと思います。
このカリキュラムを受講することで、休職・退職していた方々が、生命科学やその周辺学問領域に関する最新知識や実験スキルの補完、さらには今後のキャリアの方向付けをし、社会復帰の契機を得ることが期待されます。そのためのキャリアコンサルティングやバイオ系人材紹介企業との連携も重要なところです。生命科学系の優れた人材が、円滑に次のキャリアをスタートさせ、社会で活躍する道筋ができれば、本講座が成功したと言えることになります。本事業は19年度から21年度までの3年間ですが、その間のカリキュラム作成や実施、本事業推進のための広報などを文部科学省が支援して下さるというのが、この「社会人学び直しプログラム」ということになります。
19〜21年度の進め方
平成19年度は、カリキュラム開発、広報活動、学習環境整備当を進め、20,21年度が本格実施となります。19年度は、11月に「理系女性のキャリアと子育て」と題してシンポジウムを開催し、12月に学内で説明会を行いました。現在、本講座の受講生を募集して、2月からプレラボ実習を行い、4月から本格的なカリキュラムが開始されます。
受講生は、男女は問いませんが、修士号または博士号を持つ方を対象にしています。人数は半年7名を予定しています。可能であればそれ以上の方に参加していただき、本事業の必要性と課題を明確にし、バイオキャリア再出発のための有効なシステムの確立を目指したいと考えております。
託児所の確保やその費用負担などの厳しい課題が表面化するかもしれませんが、その他にもラボ実習の指導方法の確立やインターンを受け入れて下さる企業の開拓、学内での制度化など、解決していかなければならないことは多いと思われます。
18才人口の減少が続き、定員割れ学部を持つ大学が多くなっているのが今日の大学の実情です。その一方で、社会からは、大学のもつ知的財産や教育能力の活用を期待する声がむしろ高まっているように思われます。この事業が、受講される方だけでなく,在学生の刺激にもなれば、うれしいところです。また,これからの大学のあり方に何か参考になることがあれば、本事業遂行の喜びでもあります。学部の教員の負担をできるだけ増やさないで、むしろプラスになるように進めたいと思っています。この機会に,受講してみようと思われる方はinfo@toyakumanabinaoshi.netまでお問い合わせ下さい。
文部科学省 社会人の学びなおしニーズ対応教育推進プロジェクト
出産・育児のため休職・退職した生命科学系研究者向けバイオキャリア講座